その日、俺達の世界は壊れた。
余りにも唐突に―――



「全ては神の意のままに」

それが俺の全てだった。
この身全てを神のために捧げ、その命全てを神のために捨てる。それが俺の生まれてきた意味。
そう悟ったのはいつだったのか、そんなことも忘れてしまった。
ただこの世の全てである『神』に尽くすことが史上の至福。
だから俺はその為に、国を創った。

『アースガルズ』
それは北欧神話に出てくる神々の住む土地。
俺は国にその名を付けた。
だが、俺の神はその土地の長であるオーディンではなかった。

では、『神』とは一体なんだというのだろうか。

例えばキリスト教で崇められているのはイエス・キリストという個人である。

だが、俺の神は人ではない。

例えば、物で作られた像をあがめる偶像崇拝というのも存在する。

だが、それも違った。
そんな普遍的に溢れているようなものではなかった。
俺の『神』は―――俺が崇めていたものは―――


一体、なんだったんだ?

滅んでいく国を眺めながら、そんな疑問が湧いてきた。


俺は今までなにを崇めていたのだろう。
それは誰なのか、あるいは何なのか。
今思えば、『神』という概念を崇めていたのかもしれない。
そもそも、なぜ今までそんな当たり前の疑問が湧いてこなかったのだろう。
いや、それが当たり前だ。だからこそこの世の中に宗教などというものが成り立っているのだから。
だが、疑問は尽きなかった。
なぜ、どうして、いつ、俺は『神』を崇め始めたのだろう。
俺は普通の環境、家庭に生まれ、普通に育てられてきた。
なにも不自由することはなかった。
だが、気が付けば俺は『神』の為に国まで造り上げていた。
誰に何かを言われたわけでもなく、自発的に、盲目的に。
そのことに少しも疑問を感じることはなく。
俺は何がしたかったのだろうか。

俺は―――何者なのだろうか。

俺は今まで自らの役目を神の側近として君主となり、『神』に尽くすという名目の下、この国を統治し続けていた。
人々は俺を称え、敬い、そして崇めた。
そう、俺は崇められた。
俺は無意識に自分自身が『神』だとでも思っていたのかもしれない。
舞い上がっていた。
見えていなかった。
いや、見えていないフリをしていた。
本当はわかっていた、自分の愚かさを。
だが、気づかないふりをしていた。
見て見ぬふりをしていた。

これが―――その結果というわけだ。

「クソッ!敵がもうここまで…このままではもたんぞ!」
「痛え!だ、だれか…傷の手当てを…」
「もうだめだ!撤退しろ!」
「たすけて、誰か助けてくれえ!」
「畜生!あれは、あれは俺達の!」
「神様…どうかお助けを…」「神はなぜ我々をお救いにならない!」「クソ、クソオオオ」

「バカ野郎、神なんていやしねえのさ。もしいるのならなんで俺らを助けねえ。
そんな神なんざ崇める価値もありゃしねえ」

「そうだ、俺たちは―――」

「負けたんだ」



そして、幾日が過ぎた。

世界は統一され、一時の休息が訪れた。

だが、負け犬に休息はない。

俺達の、失くした痛みは消えない。

神は死んだ。

いや、神はいなかった。

俺達は取り戻す。

失くしたものを取り返す。

その為に、復讐の為に、悪に墜ちる。

神をも欺く。

俺達は犬になる。

死してなおも輝き続ける
ダイヤモンドドックスだ!

  • 最終更新:2016-02-17 21:14:48

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