序章 銀河視点

そこは学校の教室と思われる場所だった
前には黒板があり、周りには机や椅子が置いてある
そんなどこにでもある当たり前の場所 しかし、どこか違和感のある場所に俺は存在していた
俺は誰かと会話していた
コミュ障の俺が?まさか
相手は、顔もよくわからない誰か
いや
なぜかそれが誰か俺には分かった
優也
それは俺がインターネットをする際に、必ず顔をだすチャットの管理人だった
気づけば、周りにも何人か人がいる 顔は見えない
だが知っていた 自然と名前が出てくる
あんみつ あはは クリストファー 
どれも俺が行くチャットの利用者だ
楽しそうに、和気あいあいと喋っていた
それは決してありえない光景 あってはならない事 矛盾だらけの世界
それでも時間は流れていく 止まること無く流れていく
そして――――

1月7日

「ん…あ……?」
目が覚めたら、いつも通りの光景だった
知ってる天井だ
当たり前だ、これが現実なのだから

どうやら俺は眠っていたらしい PCはつけっぱなしだ
時々俺はこうしてPCの電源を入れたまま寝ることがある
まったく、電気代の無駄遣いだ
PCの画面を覗くと、とあるチャットの画面が映っていた
ここには毎日のように顔を出すが、チャットに入るだけで会話に参加することはあまりない
なぜなら、面倒くさいからだ
というのは表向きで、本当は会話についていけないからだ
俺はテンションが高いやつが苦手だ このチャットにはそういう輩しかいない
必死でついていこうとするが、コミュ障の俺には無理な話だった
コミュ障、俺にお似合いだ
俺はネットでも現実でも人とうまく話すことが出来ない
もっとも、現実では話し相手すらいないのだが…まあいい
そんな俺はまさしくゴミだ 人からなんといわれようと俺はこの考えを変えない
俺の人生を知らない奴に、俺のことがわかってたまるか

俺の名前は金島銀河
どこにでもいるような中学生、と言いたいところだが、普通の中学生はコミュ障ではないだろう
だが、どこにでもあるような人生を送っているのは確かだ
人に話すようなことがない、薄っぺらな人生 そこら辺に転がっているゴミのような存在
恐らく俺が元々存在しなくても、周りの人間の物語は変わることはないだろう
小説や漫画に例えるなら、脇役 いやそれを遥かに下回る
セリフもない、背景に混じっている程度の存在
いなくなったとしても、誰も気付くことはない
俺という人間は、所詮その程度の存在でしかなかった

この俺の考えをネット上で話すと、決まって同じようなことを言われる
「ネガティブ」「性格変えろ」と
その言葉を聞くたび、俺のイライラは募る
どうしてどこかも知らない他人にそのようなことを言われなければならないんだ
「あなたはそのような人ではない」
一体どこからそんな結論を導き出したのだろう 何もわからないくせに
結局俺はなんと言われたいんだろう
説教して欲しい? 同情して欲しい? 否定して欲しい?
どれも違う
どうして欲しいのか自分でもわからない
結局のところ、かまって欲しいのだけかもしれない 背景としてではなく、脇役として
だからこそ、俺はこのチャットにいるのかもしれない
せめて、少しでも他人の物語に関われるように―――

そして俺はチャットのログに目を向けた


連絡:あんみつが乱入!

優也:(@´∀`)ノHELLO!

あんみつ:こんにちは

そこから、優也があんみつに対して褒め言葉?を並べ立てていた
あんみつ 彼女はまた別のチャットにいた時に俺が会った人物だ
その時そのチャットは酷いことになっていたが、それはまた別の話だ
それから幾度かチャットを繰り返し、現在に至る
なぜか俺を慕っているようだが、慕われるようなことをした覚えはない
女は平気で嘘をつけると聞いたことがあるため、最初俺は警戒していた
だが黒い一面もあるが普通にいい人なので、最近は別段気にしてはいない
そして俺は少しでも空気を乱さないようにしつつ、会話に加わった

あんみつ:だ、だからツンデレじゃありません!

優也:うんうん、ツンデレだね

GALAXY:お前ら新年早々いちゃいちゃしやがって

優也:いたのか

ふっ、存在を認知されていないとはな
いつもの事だが

あんみつ:いちゃいちゃなんてしてません!

傍から見れば完璧にバカップルのそれだろう
そこから俺はいつも通りにほぼ一方的に言葉を紡いだ
俺の話も傍から見れば、ネガティブに聞こえるのだろうか
しかしこれが俺なのだ 変えることは出来ないし変えるつもりもない
そんな最中

連絡:あははが乱入!

優也:(@´∀`)ノHELLO!

あはは 先程のあんみつのリア友である
彼女はあんみつが別のチャットにいた時にそこを紹介し、入ってきた人物だ
そこから同じような感じで今に至る
余談だがそのチャットで優也は規制されている
なぜだか知らないが、愉快な話だ

優也:年賀状来たけど凄いなあれ。死にたくなったわ

あはは:えぇ!?優也さんも頑張ったと思いますよ

そう、この前そのあははから年賀状が届いたのである
普段年賀状はもちろん0枚なんだが、その日ばかりは1枚届いたのだ
蓋を開けてみれば、俺のハイパー手抜きな年賀状とは違い、手描きでとても凝った内容の年賀状だったのだ
俺は素直にほめることにした

GALAXY:あははの年賀状は凄い

あんみつ:私も送ろうかなぁ

優也:25日過ぎるとそれ年賀状じゃなくて寒中見舞いだから。

そこからは少し用事が出来たためチャットから離れた

帰ってくると、他にも住人が入っていた
オワタ、aiaanya、雷炎
彼らもここの住人だった
まあ、2人ほど知らない人もいるが

優也:つか、今日冬休み最期じゃねえか

嫌なことを思い出させてくれる
受験生の俺にとって、そして友達がいない俺にとって学校は苦痛でしかない
普段も極力学校のことは考えずに過ごしている

あんみつ:あ、わたしもですー

あはは:わたしもー

オワタ:あ、俺も。

GALAXY:俺いつだっけ

雷炎:俺も分かんない

時間が来たため、俺はPCを閉じ布団に入った
明日から学校だ
そう思うだけで心が重くなる 何故時間はこんなにも早く流れていくのか
神は恐らくこういう時だけ時間の流れを変えているに違いない
そう思いながら瞼を閉じた

眠りに向かっていく意識の中で思った
このまま夢が覚めなければいいと
永遠に明日という時間が来なければ…
夢のままでいてくれたらいいな、と―――



  • 最終更新:2013-01-02 23:43:53

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