勃起少年

 少年は勃起している。授業中である。
 少年は勃起している。主に、目の前の座っている女生徒のスカートから見える小さく丸いお尻と可愛らしいパンティのせいであった。先程まで立っていた女生徒は、椅子にスカートが引っ掛かり、下半身の後方が見えている事に気付いていないのである。
 少年は勃起している。少年はとても興奮していた。少年は初心である。去年まで小学六年生で、親交や家庭の方針的にあまりそういった事に触れた事が無かった。顔は真っ赤に燃え上がり、鼻血が出そうだと勘違いしそうなぐらいに火照っていた。
 少年は勃起している。然し、少年は何故、自分が思わず前屈みなのか。何故、自らの一物が天を向いて反り立ち、色んな意味で盛り上がっているのかを半ば理解できていなかった。保健体育の授業で少しは触れたことがある程度であり、股間の物は女性の穴に挿入し精子を放出する事で子供を孕ませる事ができる、その程度の認識と知識しか持っていない。然し、この盛り上がりは、性的興奮から来る挿入の準備段階なのでは?と直感的に理解していた。
 少年は勃起している。この興奮状態をどう鎮めればいいのか、少年は分からなかった。女性の穴とやらに挿入すればいいのか?今、ここで?前の席の女生徒を押し倒して?できるわけがない!等と少年は葛藤を繰り返していた。だから、少年は気付かなかった。着々と授業が進み、今、教師が答案を求めている最中である事に――。
「じゃ~……そうだね。後ろの、君!君、この問題の答えを言ってみたまえ!」
 少年は勃起している。教師に急に指名され、思わず凄い勢いで起立してしまった。その衝撃が。ズボンとパンツの擦れが、少年の盛り上がった物に更なる刺激を加えてしまった。少年は思わず、変な声が出そうになる。咄嗟に前屈みとなり、机に突っ伏した。
「ぐ……はぁ……はあ……」
「き、君!大丈夫かね!?見れば顔が真っ赤だ!ほ、保健室に……」
 少年は勃起している。先ず、最初に教師が近づいて来た。次に、クラスメイトが。一瞬にしてクラスは騒然とした空気と状況に包まれた。
「だ……大丈夫です。授業を――続けてください。続けさせてください。僕は、大丈夫ですから」
「そ、そうか?本当に危ないなら言いたまえよ?」
 少年は勃起している。バレるわけには行かなかった。一時の昂りで授業を中断させたと知れ渡られたら、それはそれは酷い事になる。伝説級の笑いものになること請け合いだ。だから、授業を続けさせた。少し間を取ってから教師は授業を再開し、クラスメイトは着々と席に戻っていった。義務教育によって刷り込まれた団体行動と適応する意識により、完璧に訓練された日本の中学生はほぼ一瞬にして空気を切り替えられる。
「では、彼の代わりに――」
 少年は勃起している。授業は前述の通り、再開された。少年は必死に昂りを治める術を考えた。一刻も早くに、この興奮状態を解かなければならなかった。然し、授業中であった。そして、少年の知識は一般的な思春期の学生よりも少なかった。つまり、マスターベーション――オナニーをしらなかったのだ。
 少年は勃起している。少年は考えた。性交渉によって昂りを治められるのならば、疑似的に性交渉を行えばいいと。思いついてしまった。少年の中では、林檎のなる木から林檎が落ちた時に、重力を閃いたニュートンの様な画期的発想であった。少年はポケットの中に手を入れた。利き手であった。そう、少年は性的行為は穴と棒の抜き差しによって成り立つ事を思い出したのだ。ならば、手でその抜き差しを再現すればいいと思った。カップラーメン発明の重要点である逆転の発想、織田信長の三段撃ちの如き天才性であった。
 少年は勃起している。少年は人生で初めて己の手で股間の物に刺激を加え、上下運動を行っていた。出来るだけ、音を出さず、不審に思われないように努めた。当たり前である。
 少年は勃起している。少年は射精する感覚を味わった。それは幾つもの生命の誕生と死であった。そして、とてつもない浪費で無駄な瞬間であった。然し、少年にとっては日本史における黒船来航の如き重要な点であった。新しい時代の始まりであったのだ。少年は一息吐いた。そして、後処理どうしようと考えた。
「何か……イカ臭くね?」
 少年は勃起していた。少年はこの行為のデメリットを半ば悟った。その後、少年は出来るだけバレないように努めたのであった。

  • 最終更新:2016-07-10 22:04:08

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