亡霊

8日目の夜。エミッタが劣化して、ついたり消えたりをする蛍光灯の下を、僕は歩く
そもそも完全な状態であっても一部分しか照らせない蛍光灯が、劣化したとあれば、照らせる範囲などたかが知れている。普段から柄物の服など着ず、知り合いにはセンスがない、ダサいなどと言われた黒一色の服を身にまとった僕がそこを通ると、それはまるで、闇夜に溶け込む亡霊と同じだ。僕は、亡霊だ
そうか、今日は8日目だ。今回で8回目だったのだ、ここを通るのは。僕は8回も此処を通って、彼女に会いに来ていたんだ。僕は彼女が好き。好きすぎて、しょうがない。昨日なんてコンビニでからあげクンを頼むときに彼女の名前を出してしまうくらいに、好きだった。でもそれは、普通のことだよね。
僕は今、彼女の家の前にいる。ここの蛍光灯も劣化して、ほとんど周りを照らせていない。僕は闇夜に溶け込んでいる。僕は亡霊だ。彼女の部屋は2階の手前。カーテンが閉まっている。電気は消えているから、寝ているのだろう。
表札によじ登って、1階の雨除けに足をかけ、ベランダに登る。彼女の家は、2階が無防備だ。足音を立てないように、彼女の部屋の前に行く。彼女の寝息は聞こえない。鍵はない。ドアを開けると、ベッドで彼女が寝ている。ああ、彼女だ。彼女が居る。僕の目の前で可愛い寝息を立てて寝ている。彼女が。彼女は僕を見たらなんて思うだろうか?ああ、きっと悲鳴を上げるだろう。だって僕は亡霊だから。彼女を呪う亡霊だから。きっと彼女はこう言うだろう、いや、何も言えないだろう、だって、恐怖で、声も出ないから?彼女が寝返りを打った。ああ、彼女の寝返り。僕は好きなんだ、こういうのが。だって、僕には絶対に見せてくれないことだから。それが、目の前で起きているって、最高に素晴らしくて、最高に興奮することじゃないかな。好きだよ
いつもどおりズボンを降ろして彼女の頬に押し付ける。うん、この感覚だよ。この感覚が好きで好きでやめられないんだ。僕はいま犯罪者?違うよ、僕は亡霊。だから罪には問われないんだ。誰も僕を止められないんだ。誰も気づいていない。誰にも見えない。はぁ、はぁ。好きだ。彼女も、この感覚も、何もかもが好きなんだ
あっ、出るよ。うん、今日もありがとう、またくるね


  • 最終更新:2016-07-10 21:59:23

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