亡き神なきし

「2666年12月31日にて西暦の終焉、そして完全無欠なるまことの人類文化完成を告げる――愚かなる原始生活もとい神を忘れ捨てる時が来たのだ!」
 この宣告を当年の元旦に表明した、というのは11か月前の話か。とどのつまり、今は12月の上旬。まもなく統一者創始の新人類歴が始まろうとしていた。
 人類文化が如何に素晴らしいかという事は、普段の生活に痛いほどわかっている。2秒で終わる食事は、名前もないこの小さな豆粒のおかげで。学問も労働も不必要になったのは、人工知能を持ったアンドロイドのおかげ。道を歩かずに済むのは足の裏に車輪、肛門……いや、尾てい骨にブースター等数々の機械を移植したからだ。他にも人類文化もとい科学の恩恵は数知れない。何といっても私はこの時代に慣れているからだ。
 私が何故にかような事言えるかというと、趣味で歴史を学んでいたからだ。――周りからはかなり変わり者扱いされた――
 私は知っている。大昔の人間生活の無様な事か……惨めな事か……汚らしい“家畜(労働や、食す為に育てた動物のこと)”を咀嚼し飲み込むそれを食事、地に足を付け歩む事を歩行としていた。私ですらゾッとするようなおぞましさだ。しかし何故だ? 何故に神を殺すなど思い切った事ができようか。この素晴らしい人類文化は科学によってこれ以上にない成長を遂げ、とうとう完成を迎えたが、神なる存在は確かに、われわれ人類の成長と共にあったハズだ。
 ――等と私がありとあらゆるメディアを使って公表したところで、手遅れだろう。
 それに、学問を知らない貴様らに、小難しい話をしても無駄だろうから、これを歴史の教科書などにするつもりはない。 
 今日もテロリストじみた宗教家たちが、紛争を起こしている。12月31日の終焉を何としても止める為だ。せめてもの武力の抵抗こそ、常識屋たちのいう原始生活そのものだが……どちらが正しいかは趣味で考古学を学ぶ、ただの変わり者の私に明言できたことでない。
 しかし、最後にこれだけは言わせてくれ。今後の人類の行く末は、かつての人類が信じた神のみぞ知るとな。いつにおいても人類は神の下で平等だったのだと。

  • 最終更新:2016-04-16 17:57:38

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード