ショットガンロンパ プロローグ

 ――大都会の街中を、「超高校級」と称される少年は立ち止まっていた。
横を向けば会社員風の男女が、後ろを向けば幼い少年少女や短いスカートに制服の今時の女子高生等々。
そして、目の前には雄々しく聳え立つ校舎と正門。しかし、それは「希望ヶ峰学園」と称されるにはあまりにも穢れていて、寂れていた。
正門の目の付くところに寂れた鉄製の看板に画かれている名称は「希望ヶ峰学園 絶望科校舎」。

 少しため息を吐いて、息を吸い込む。そして、覚悟を決めたかのように少年は一歩を踏みしめた。

 ――希望ヶ峰学園に入るには、ある分野において「超級」の才能が必要である。
だが、必ずしも才能を持つものが優れた精神性、充実した日常、彩られた過去を持つわけではない。
時に、捻じ曲がった精神性を持つ天才はいる。時に、まともとは言えない日常を過ごした天才はいる。時に、言葉に表せられないような過去を持つ天才はいる。
そして、希望ヶ峰学園は天才であればあらゆるものを迎い入れる場である。
しかし、希望ヶ峰学園は屈折し、心折れ、斜に構える者達を更生させられるほど、万能ではない。
だから、作られたのがそれらを収容する「希望ヶ峰学園 絶望科」。

 少年もまた、穢れてしまった。もしくは最初から穢れている「天才」。
少年は踏みしめた。絶望への一歩を。少年は歩んだ。希望と対である道を。
 もう戻れない。引き返せない。後ろを向いてはいけない。
 入ると決まった時点で、彼の青春は終わったも同然なのだから。
「――よし」
 そして、その一言と共に少年は正門を超え。視界は暗転し、ノイズのように様々な何かが、知らない筈のものが、流れ出し、消えていく。

「ふぅーん、お前■っていうのか。俺は■■■■だ」「私、■■。スカイプやってる?好きなものは――」「始めまして、■■■です。」「よろしく」「■■してるから、ちょっと待って」「俺は――否、私は■■■。ところで■■■好き?■■■■は?ゲームとかやってる?」「始めまして、■■って言います。初体験は――」「ええっと、■■■です。何て呼べばいいですか?」「俺の名前は■■■■■。■■というキャラを描いて来たぞ」「どうも、初めまして~」「■さん、ですか?私は■■■■です」「始めまして、■■■■です。■■は私の親友ですよ!」「よう、■■■■だ。何て呼べば良い?」「いいな、お前。センスあるよ」「流石、■だ」「ところで、■■■■って可愛いくないですか?」「そんなことはない、お前は凄い」「ちんこ」「死ね」「■さん。今度、一発ヤりませんか?」「最低ですね……」「■isGOD」「何ですかそれ!?もう好きにしてください……」「やっぱり、■さんは良い人ですね」「■さんも■■に言ってやってくださいよ!」「最近、小説の執筆が上手くいかなくてな……」

 それは、まるで走馬灯のようで。忘れてはいけない何かのはずで。だけど、知らないもの。
シャボン玉のように消えてゆくそれを、「俺」は忘れてはいけないと分かりながらも、然し、止まらない。
 涙が流れている気がした。視界は既に霞んでいて、思考だけが漠然とできるが、流れてゆく何かのせいでまともに考えられない。

 ああ、全く以て――

「――絶望的だ」










「おぉーい、生きてるか?駄目だな、死んでる」
「どうする?優也。起きるまで待つ?」
 ふと、少年の意識が安定し始めると、近くから何かしらの声が聴こえた。声質からして両方男だろう。
それと何か頬が痛い、何度も叩かれた気がする。誰にだ。さっきか。
「そうだな、じゃあ椅子で頭叩いてみるか」
「いいな、それ。私、賛成。大賛成」
「やめろお!?」
 跳ね起きてしまった。椅子で頭叩くとか何考えてるんだこいつら。正気かよ。
 起きたついでに、周りを見渡すと自身を除いて十四人の少年少女が佇んでいた。場所は教室の様だ。
男が九人、女が五人と少し偏っている。全員のだいたいの特徴は以下の通りだ。
一人目、先程、俺の頭を椅子で叩くとか言い出したニヤニヤしてる男。眼鏡が特徴的だ。髪は短い。
二人目、先程、俺の頭を椅子で叩くのに賛成した男。太っている。声は比較的高めで、印象に残り易い。
三人目、何か黙々と電子機器を弄っている背の低い女。胸も控えめだ。
四人目、机に突っ伏しながら周りを観察している男。背の高さ、顔的に自分よりも年上か。
五人目、何か参考書読んでるリア充っぽい雰囲気の男。
六人目、周りに話しかけたそうにしている背の低い男。女みたいな雰囲気だが恐らく男だろう。
七人目、隅っこで体育座りしている男。六人目の男にちょくちょく話しかけられていたが知り合いだろうか。観葉植物みたいな雰囲気。
八人目、スカートが異様に短く、ブラウスから大きい胸が主張している女。淫乱そうな眼をしている。
九人目、音楽プレイヤー片手に誰かに話かけようとしている女。顔は比較的整っている。学校で三番目ぐらいの可愛さという喩えはどうだろうか。
十人目、周りを惹きつける雰囲気の男。年下の様な雰囲気で、童顔気味。ノートに何かを描いている。
十一人目、何というか、凡庸な雰囲気の男。少し中世的な顔つきだ。ずっと携帯ゲーム機を弄っている。
十ニ人目、隣の席の人と話している少女。顔はこの中で一番整っているのではないだろうか。性格の良さそうな雰囲気だ。
十三人目、十ニ人目の女と話していた女。こちらの方はメガネをかけていて、少し地味だが、明るそうな雰囲気。
十四人目、制服の上に黒いコートを羽織っている男。優雅に椅子に座っている。なんなんだこいつ。

 ――取り敢えず、見渡しての感想は。ろくでもないの一言だ。
記憶があやふやだが、希望ヶ峰学園絶望科の正門を抜けたのまでは覚えている。
もしかしなくても、こいつらも絶望科の生徒だろう。十割の人間がまともじゃないのは確実だ。
何ていったって「絶望科」なのだから。

「えーっと、先ず、自己紹介をしようよ」
 と、唐突に言いだしておく。自己紹介は必須だ。これからこいつらと一緒に過ごすのだから。
個人情報を集めておいて損は無い。
近づいていい奴、近づいちゃいけない奴。煽っていい奴、煽るのは控えめにしておく奴。
何にしても、その個人を評価するのには重要。
 で、集めた結果、判明したのが以下の情報。
一人目の男。魂魄 優也。超高校級の才能は教えて貰えなかった。
二人目の男。色手 理濡。超高校級の才能は「伝達者」。なんだそれ。
三人目の女。打目田 えころ。超高校級の才能はイラストレーター。ぼそぼそと話ながら答えてくれた。
四人目の男。天乃川 銀河。”自称”超高校級の絶望。関西訛りがすごかった。
五人目の男。海豹 珍法。超高校級の才能は勉強家。結構、ノリが良い。やはりリア充。
六人目の男。星 紫苑。”自称”超高校級の王者。絶対嘘だ。
七人目の男。壁ヶ等 白芽。超高校級の才能は傍観者。星紫苑とは旧知の仲らしい。
八人目の女。夢見 結女。超高校級の才能は淫乱。何だか淫行に誘われたが断っておいた。
九人目の女。編 亜夢。超高校級の才能は天然キャラ。とある掲示板を牛耳っていたところ、スカウトされたらしい。
十人目の男。倉那本 直式。超高校級の才能は教祖。小規模ではあるが、一つの宗教を持っているそうだ。
十一人目の男。波呂比 那須。超高校級の才能は凡人。超高校級の凡人とは何だと周りに聞かれていたが、本人も分かっていないとか。
十二人目の女。阿羽 葉子。隣りの少女曰く、超高校級の才能は聖人君子。本人は頑なに否定していた。
十三人目の女。安海 津姫。超高校級の才能は吹奏楽部。楽器は持ってきていないが、演奏が上手とのこと。
十四人目の男。秋本 幸真。超高校級の才能は本人曰く双剣使いだそうだ。嘘っぽい。
 真偽は不明だが、何れも本人達から聞いた情報だ。
 そして、最後に自身の番となった。
「それじゃあ、俺の自己紹介をしようか。名前は、天野 昴。超高校級の才能は――」

 ――突如、校内放送と思わしきチャイムの音が鳴った。

 怪訝な顔をするもの。無視をするもの。自己紹介を続けろと催促するもの。
それぞれの反応は様々だった、だが、然し、何れも、誰も彼も、それが「絶望」の始まりの音だと気付かなかった。

「はい、自己紹介の途中、悪いけど、これから”おまえら”に殺し合いを始めてもらいます」

 それは、誰もが聞いたことがありそうな声で、突如、教室の教壇の上に表れた。
通常では有り得ない真っ黄色の肌。への字に折れ曲がった眼のような何か。
そして漫画やアニメの吹き出し状の顔だけの身体。一発でホログラムと分かる異質さ。

「はい、私は希望ヶ峰学園絶望科クラス担任教諭。”はつしろくん”です。
さて、先ずは皆さん復唱しましょう。はつしろくんisカミ、と」

 ――その日、俺らの殺し合い青春バトルロワイヤルが始まった。

  • 最終更新:2016-04-02 15:29:42

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